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バイオメカニクス

 午前10:20出勤。曇りだが、非常に蒸し蒸ししている。心なしかコンタクトレンズも朝から曇るような感じである。
2005_07_16_Caplio 写真は品川プリンスホテル裏の、水族館、映画館がある辺り。水族館に並ぶお客さんの日避け用にパラソルが立った。気が利いている。
 2年生本科の授業。講義は斜頚を終わり、胸郭出口症候群に入る。
 胸郭出口症候群とは? 肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)付近には、頚椎から出た神経、動脈、静脈が密集する。この神経、血管の束を、神経血管束と呼ぶ。肋鎖間隙が何らかの原因で狭(せば)まると、神経血管束は絞扼(こうやく。締めつけられること)を受け、様々な障害が起こる。
 例えば? 神経血管束は主に上肢(腕)に入る。よって、腕の痛み、しびれ、脱力感などが、肩こりと同時に生じる、などといったことである。これが胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome=TOS)。非常に多くの肩こりの原因となっている。
 神経血管束の絞扼の原因は、肋鎖間隙の狭小化以外にも、いくつかある。それぞれに適した対処をしなくてはならない。ということで、まずその区別、区別のための検査法、までだね、今日は。
 後半の実技の枠では、1年生時に習ったテクニックの総復習をやっている。こっちのキーワードは「基本」である。
 体の作りは、治療家によってそれぞれである。だから、治療家たるもの、誰しもいつかは基本を離れ、自分のカタチを見つけるべきである。また、殊更(ことさら)そんな意識を持たなくても、これは自然とそうなるものでもある。
 が、標準的な肉体の、人間一般にとって、一番合理的なカタチっていうのはどんななの? と問われたら、それを説明でき、かつ実際にやって見せることができなくてはならない。何故か? 人を雇う場合、その人が、自分と同じような体を持っているとは限らないからである。
 自分と違う体を持った者、場合によると自分を越える素質を持った者に対して、「オレはこれでやってきたんだから、お前をそれを真似れば上手くいくはずだ」式の指導をしていたのでは駄目。人が育たない。人が育たなきゃ、治療院の経営も、当然、安定しない。
「基本」とは「万人向け」ということである。どんな体格、体質、体技の癖を持っていても、人間である限り、この形が最も合理的であるような形。これが基本的な形だ。これができていると、人に教える場合のみならず、自らがスランプに陥った際の、自分の手技の見直しにも必ず役に立つ。
 だからバイオメカニクスです。バイオメカニクスとは? 訳せば、生体工学あるいは人間工学。制限のあるヒトの肉体をどのように使えばより合理的な動きができるか、ということである。
 合理的である、とは? 2フレーズに集約できる思う。
「同じ筋力を使うので、あればより強い力が出ること」
「同じ力を出すのであれば、より少ない筋力で済むこと」
 そのようなことを可能ならしめるポジション、肢位、型についての理解があり、そういったポジションが施術の中で自然に出てくること。これが「体ができている」ということである。
 だから土曜の後半、これをやる時間には
「ボク的にはこっちの方がいいんですよねぇ」
とかは言いっこなしだ。しかし、
「バイオメカニクス的には、こっちの方が合理的ではないですか?」
などという議論ならオールウェイズ・ウェルカムである。
 夕食=ポークステーキなど。

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