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どうっすか部長、今晩、一杯? ②

「アルコールに強くなる」というのは肝臓が強くなって、アルコールの分解能力が高まることなのか? NOである。
 これは実は体の細胞(特に神経細胞)の方がアルコールに対して耐性を上げるということなのだ。耐性とは? ちょっと細かく説明すれば以下のようになる(参考=『アルコール依存の生物学』(学院のライブラリーにあります))。
 われわれの体の全ての細胞は細胞膜におおわれている。細胞膜は取捨選択の上、外の物質を取り入れ、内の物質を排出するのを一定の速度で常に行っている。この性質を細胞膜の流動性と呼ぶ。
 細胞膜の流動性は飲むと上がる。血の巡りがよくなって、カッカしてくる、体がほぐれ(た気がし)てくるのは、このためだ。
 が、アルコールを連用すると、そのうち、より多くアルコールを浴びないと細胞の流動性が上がらなくなってくる。これが「耐性が上がる」という現象。ちょっとの運動で十分に「効いた」初心者も、ベテランになるとより強い運動をしないと「効いた」気がしなくなってくるのと同じである。
 非常に問題なのは、この状態になると、飲んでいない時の細胞の流動性が「下がって」くることである。どうせそのうちアルコールが上げてくれるんだから、と、細胞膜どもがさぼり始めるんだね、仕事を。アルコール連用者が、「飲まないと、なんかつまらねぇ」とか言い出すのは、このためだ。身体的アルコール依存の成立である。
 で、飲む。が、なかなか酔わない。で、もっと飲む。やっと酔う。
 これを見て人は「お強いんですねぇ、肝臓が」などと言うのだが、勘違いというものだ。アルコールを浴びても平気なように体の方が慣れ、馬鹿になってしまっているだけで、決して肝臓がパワーアップしたわけではない。むしろ肝臓は、日々、過労を強いられ、機能も普通以上のスピードで衰えてゆく。
 が、厄介なことに肝臓は、沈黙の臓器と呼ばれるように、よっぽど駄目になるまで症状を現してくれない。我慢強過ぎるヤツというのは、人も臓器も困りものだ。で、非常にしばしば、初めて症状が出た時がイコール手遅れの時、つまり肝硬変だったりするのだ。
 肝硬変とは、肝細胞が線維組織に変化してしまうこと。硬い靴はいて歩き回ってると、足の裏が硬くなる。あれに似ている。違うのは、硬くなった皮膚は負担を減じればまた柔らかくなるが、いったん線維化した肝臓は決して元には戻らないこと。
 よくいわれるように肝臓は、半分以上切り取っても、短期間のうちに完全に再生する。が、そのくせ、線維化した部分は元には戻らない。不思議といえば不思議だ。
 そんなわけだから、まあ、飲むのも若いうちはいいのだ。社交の範囲を広げることにもつながるだろう。「飲みニュケーション」などという言葉があるように、日本は飲み社会だ。その方面のつき合いが悪いと、世界が狭まりがちになるのは現実である。
 問題なのは40を越えたサラリーマンだ。通常、会社勤めをやっていると、このぐらいの年代で飲む機会が加速度的に増える。顧客の接待で一杯、ストレス晴らしにまた一杯。
 しかも体の方は耐性が上がっているから、飲んだ気になろうと思ったら、昔よりいっぱい飲まなくてはならない。「一杯」が「いっぱい」になってしまう。シャレてる場合ではない。危ないことこの上ない。
 この点、ボクらのような治療家(や、そのインストラクター)だと、40にでもなれば周りは自分より若い連中ばかり。儒教社会の掟に則って酔っぱらって見せてやらなくてはならない相手がいない。また、顧客接待という仕事とは無縁である。
 というわけで、肝臓が弱くなるのに比例して、飲まなきゃならない機会も減る。治療家の生活は健康的にできているのだ、というオチでした。
 ちょっと風邪を引いたか。喉が痛い。早く寝ることとする。
 夕食=またポロロッカの鳥唐揚げタルタルソース丼、ウナキモ(鰻の肝臓)串、サラダなど。

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